映画『君たちはどう生きるか』通常上映館とドルビーシネマとIMAXレーザーを見比べる
映画『君たちはどう生きるか』スタジオジブリのセルアニメ風映画では、初めてとなる4Kのドルビービジョン・ドルビーアトモス仕様ということで、通常上映館とドルビーシネマを見比べをしました
1回目を通常上映館の4Kレーザープロジェクター上映で、2回目を2Kプロジェクターのシネスコスクリーンへのビスタサイズピラーボックス上映で見たあと、3回目をドルビーシネマ(追加料金700円)で見ました。
見比べた感想ですが、まずわかりやすいのが冒頭の火災の表現でドルビーシネマならではのHDR(ハイダイナミックレンジ)で、空中を舞う燃えかすが立体的に見えます。音響もドルビーアトモスで効果音が耳の横まで迫ってくるような音響が楽しめます。間違いなく画質は最高なのですが、欠点もあり素直には薦められないなというのが正直な感想です。
欠点というか見る人により評価が分かれるところを書きます。スタジオジブリのデジタル上映映画はフィルム上映を再現するため、こだわりでフィルムのガタつきをわざと再現して加えています。ドルビーシネマの明るい鮮明な上映だと通常上映館ではあまり気にならない、このガタつきが人物の輪郭線のブレではっきりと分かります。この輪郭線ブレが人によってはかなり気になります。
また、通常上映では気にならないフィルム上映を再現するためのフィルムグレイン(フィルム粒子状の画像加工)が乗っているのもよく分かります。このフィルムグレインがシーンによっては乗せすぎで映像がボケているのではと錯覚するシーンもあります。
そのためドルビービジョンで見るよりも通常上映館の方がフィルムグレインとか余計な事を気にせずに気軽に見ることができる感じがします。
というわけで、わざわざ遠征して追加料金700円(大人通常料金2700円)払ってまで見る価値があるかどうかは人によります。イオンシネマの追加料金なしドルビーアトモス上映が1番お得な上映だと思います。ドルビーアトモス上映館も近場にないという方は、最寄りの映画館のスクリーンで十分楽しめる映画だと思います。
欲を言えばフィルムブレ加工なし、フィルムグレイン加工なしの高画質ドルビーシネマ上映を見たいところです。
そして4回目、IMAXレーザーで見ました。さすがに映写機が1台で大画面に映す関係で、ドルビーシネマよりも暗く感じます。また、画質を確認するため、いつも鑑賞する位置よりも前で見たのでRGBレーザープロジェクターの欠点であるレーザースペックルノイズが発生しているのも良く分かります。フィルムグレインなのかスペックルノイズなのか分からないぐらいです。セル画調手書きアニメはスペックルノイズが目立ちやすいのでキセノン電球のIMAXデジタルシアターの方が良いかもしれません。ドルビーシネマではスペックルノイズが極力少なくなるよう投影していますのでドルビーシネマの美しさが際立ちます。IMAXレーザーのスペックルノイズだらけの映像よりも通常館の2K上映の方が綺麗に見えると思います。音響はドルビーアトモスからのコンバートとなるIMAX 12chサウンド。こちらもドルビーアトモスの方が良好です
あと、気になるのが額縁上映でした。『秒速5センチメートル』IMAXレーザー版を観に行ったら額縁上映でガッカリほどの額縁上映ではないのですが、細い黒枠がついた額縁上映でした。上映中は写真撮影できないので図にするとこうなります。
日本の標準的なIMAXレーザーシアター。写真だと分かりづらいのですがスクリーン上を見るとカーブスクリーンなのが分かると思います。
スタジオジブリ作品のDVDも黒枠がついた額縁収録でしたし、スタジオジブリの哲学的にカーブクスリーンで隠れないように額縁上映しているのでしょうか。洋画のビスタサイズのIMAX作品は額縁上映ではないのに、わざわざ額縁にしているということはIMAX用のDCPはドットバイドットで制作しておらず、通常上映の4K DCPよりも劣る解像度で収録しているということでしょうか。その他の邦画もわざわざ額縁にして等倍ではない劣る解像度にしているのも良く分かりませんね。
(参考記事)
→ドルビーシネマは、“制作者がこういう状態で見て欲しいと思う最高峰”。スタジオジブリ『君たちはどう生きるか』制作陣が、こだわりの制作技術について語った(Stereo Sound)
→『君たちはどう生きるか』の絵と音はこうして生まれた。スタジオジブリ担当者が語る、この夏の話題作に込められたこだわりの作品づくりとは(前)(Stereo Sound)